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ANCAの3疾患
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顕微鏡的多発血管炎(MPA:microscopic polyangiitis)
概要
ANCA関連血管のなかで最も頻度が高い疾患です。高齢者に比較的多く発症します。障害される臓器によって様々な症状が出現しますが、すべての臓器障害が必ず出現するわけではありません。全身症状、腎障害が出やすいです。
(1)全身症状:発熱、倦怠感、体重減少。
(2)腎臓の障害:急速進行性糸球体腎炎となり、数日~週単位で腎機能が低下します。尿検査で血尿、蛋白尿が出現し、血液検査でクレアチニン値が上昇します。腎生検が必要になります。
(3)肺の障害:間質性肺炎や肺胞出血を起こし、息切れや血痰、ひどいと呼吸困難となり重篤な状態になります。
(4)皮膚の障害:両下肢に紫斑(点状のアザ)や潰瘍が出現します。
(5)関節・筋の障害:関節痛や筋痛が出現します。
(6)神経の障害 (末梢神経障害):特に下肢のしびれや動かしにくいといった症状が出ます。
(7)消化管の障害:まれですが、腸管に潰瘍や出血を起こし、腹痛が出たり、下血することがあります。
特徴的な検査結果
血液検査:MPO-ANCA陽性、クレアチニン(Cre)の上昇、炎症反応(CRP)の上昇
尿検査:蛋白尿・血尿
治療
ステロイドを中心に、免疫抑制剤を併用します。初期治療は入院が必要です。ステロイドを高用量から開始し、臓器障害が重篤の場合は、ステロイドパルス療法や、血液中からANCAを除去する目的で血漿交換を行うこともあります。免疫抑制剤はシクロホスファミド(エンドキサン®)、リツキシマブ(リツキサン®)や、アザチオプリン(イムラン®)、アバコパン(タブネオス®)などが併用されますなどが併用されます。
多発血管炎性肉芽腫症(GPA : granulomatosis with polyangiitis)(旧名称:Wegener肉芽腫症)
概要
気道における肉芽腫性の炎症が特徴的で、中耳炎、副鼻腔炎、眼窩の炎症、気管支・肺の下気道の炎症、さらに腎炎を起こします。
(1)眼窩の病変:眼窩とは眼球の裏側のスペースのことです。眼の痛み。眼球突出が出ます。
(2)中耳炎、副鼻腔炎:難治性の中耳炎、副鼻腔炎で発見される方もいます。
(3)肺病変:血痰・喀血、呼吸苦が出ることがあります。CT検査が有用です。
(4)腎病変:顕微鏡的多発血管炎(MPA)と同様に急速進行性糸球体腎炎を起こします。
(5)その他:全身症状として、発熱、倦怠感、食思不振、体重減少が出やすく、関節痛、紫斑、末梢神経障害、消化管出血が出現することもあります。
特徴的な検査結果
MPO-ANCA、PR3-ANCA
難治性の中耳炎
治療
基本的には、顕微鏡的多発血管炎(MPA)と同様の治療法です。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)(旧名称:Churg-Strauss症候群,アレルギー性肉芽腫性血管炎)
概要
気管支喘息などのアレルギー疾患が以前からある人で、両下肢や両手のしびれ・麻痺症状が出現するという特徴的な経過になります。特に難治性の喘息や、最近急に喘息の状態が悪くなるようなケースが多いです。血液検査では、好酸球が著明に増加していることが特徴です。
主要症状
(1)気管支喘息(あるいはアレルギー性鼻炎)
(2)血液検査で、好酸球増加
(3)血管炎による症状:発熱、体重減少、多発単神経炎(下肢のしびれ・疼痛・麻痺)、下肢の紫斑が出現しやすく、まれに肺症状(咳、痰、息切れ)、副鼻腔症状(蓄膿)、筋痛・筋力低下、消化管出血なども起きます。
*(1)(2)が先行し、(3)が発症します。
特徴的な検査結果
好酸球数、MPO-ANCA
治療
ステロイド治療が基本になります。神経障害(手足のしびれ、痛み)に対しては、大量免疫グロブリン療法(点滴治療)や神経障害性疼痛治療薬(リリカ®、タリージェ®)などを補助的に使用します。難治例やステロイド減量が困難な例では、抗IL-5抗体の生物学的製剤であるメポリズマブ(ヌーカラ®)を併用します。
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